あんな衝撃的な現場を目撃してしまったお陰で、次の授業は全くといって良いほど集中できなかった。
無論、宿題も空欄を残しての提出となった。
後日担当の教師から呼び出しを食らったらどうしよう。

とは言え今の私にしてみれば、そんなことは耳クソレベルの問題である。
考えたくないのに、和泉川先輩のあのいやらしい笑みがすっかり脳裏に焼き付いてしまっているようだ。
いくら気を取り直そうとも、フラッシュバックの如く私の脳内を掻き乱していく、たった数秒のあのシーン。

無理もないか。性的なことに興味が無いと言えばそれは嘘になってしまうけれど、まさか生で、しかも他人の行為を間近で見せつけられることはイレギュラーな展開も甚だしかったのだ。
それに、あれと同じことを以前された立場としては、複雑なことこの上ない。

私はあのギャルと和泉川先輩を通じて間接キスしたことになるのか。
なんと生々しい等式が成り立つものだ、と吐き気がした。