あの後、補習がかかったテスト前という忌々しき事態に免じて、和泉川先輩は私といかがわしい行為をするのを先延ばしにしてくれた。
流石バスケ部内でも筋金入りのガリ勉だっただけに、その辺りはよく弁えていらっしゃる。
と感心した直後、


「腰痛めて明日学校来れなくなったら、勉強教えた意味なくなるしな」


なんて言われた時は慄然とさせられた。
この人本気でヤる気だったんだ。
しかもつまるところ、自分のために聞えなくもない言い分である。
自己中はこれだから。ほんと、1ミリでも感心した自分が間違っていた。

そうして今年の夏最大の山場である期末テストに臨んだ私。
和泉川先輩の力添えあってか、スラスラと問題を解けたことには驚きを通り越して怖くなったくらいだ。
数学においてはクラス内でも最下位を争うこの私が、まさかミスが無いか確認する余裕を残して全問埋められるなんて夢のようだった。