昔から来客の度に図々しいことをしでかす妹だけど、この時ばかりは感謝せざるを得なかった。
ありがとう我が妹よ。あなたの可愛い姉は、少しだけ貞操の寿命を延ばすことができましたよ。


「あの、苦手じゃなければどうぞ」


とりあえず気を取り直して、和泉川先輩へケーキを食べることを勧める。
すると今のですっかり萎えてしまったのか、はたまたモンブランが大好物だったのか。
思いの外聞き分けの良い和泉川先輩は、私に迫り寄ってくることなくフォークを手にした。

和泉川先輩につられるように、私もモンブランを口にする。
ブランデーでも入っているのだろうか。ほんのり大人な味が口内に広がった。

だけど本当の大人の味を味わうのは、まだまだ先で良いんだ。
不思議の国のアリスをモチーフにした時計の針は、ちょうど午後3時を示している。