なんでも初めて事件を解決した時、たまたま缶コーヒーを手にしていたらしく、それ以来癖になっているらしい。

「この人どうしたの?」

林が不思議そうに達郎を指さした。

「静かに!」

あたしは人指し指を唇にあてた。

達郎の沈黙は続く。

微動だにしないその姿はまるで精巧・緻密に作られた人形のようだった。

不意に林がカメラを構えた。

「ちょっと…」

あたしが制する間もなく、ストロボが閃いた。

その後もシャッター音は続き、何回もストロボがたかれた。

どうやら写真家のインスピレーションを刺激してしまったらしい。

そこまで大したもんじゃないだろと、あたしが胸の内でつぶやいたその時、乾いた音がした。

達郎が缶コーヒーを開けた音だった。

そのままコーヒーを一口飲むと、達郎は大きく息を吐いた。

「やっと全部つながったぞ、レミ」

その声は、確信に満ちていた。