「じゃ、かいつまんで説明してくれ」

「んな器用なことできないわよ」

あたしは手帳を開いた。

「遺体となって発見されたのは鳥海広義(85)。生まれも育ちもN県H市K町」

そのK町で長く衣料品店を営んでいたが、20年前に家業を息子に譲って隠居。

しかし6年前に長年連れ添った妻を亡くしてから体調を崩し、ここ1年余りは寝たきりの状態が続いていたという。

「息子の名前は鳥海哲夫(51)。妻は光子(50)。父親から継いだ店を切り盛りしながら、父親の介護を続けていたそうよ」

「息子夫婦に子供は?」

「子供はいないわ」

あたしは話を続けた。

「事件が発覚したのは、9月7日正午。息子夫婦が昼食をとるために店から帰宅したところ、何者かが侵入した形跡があるのを発見した」

「ちょっと待て。店と実際に住んでいる家は別なのか?」

「店は以前住んでいた家を改装したもので、住むには手狭だったみたい」