百合は思わず吹き出した。
それと同時に涙が、胸の中にたまっていた憂鬱と一緒にこぼれ出た。

「ユリ、新婚旅行はオーストラリアに行きたいの?」

真面目な顔で聞いてくる卓也に、百合は抱きついた。
タクが一緒なら、行き先はどこでもいい。
でも靴下くらいは、自分で持ってよね?

大好きな人に、大好きと思ってもらえる幸せ。
その温もりが、肌を通して伝わってくる。

顔を上げると至近距離に、困った表情で視線をそらす卓也の顔。

「ねぇ、あの・・・」

「ん?」

「えーと、その・・・」

「なに?」

「・・・キスしても、いい?」

百合は、少し考える振り。
今までわたしを不安にした、お返しだ。

それから、穏やかな笑顔で答えた。
人生最高の日に、最高にかわいらしい笑顔で。


「うん、いいよ」




【土曜日の憂鬱な花嫁・完】