小宮山は、公園を出て歩き出す。

フライドチキンはもう冷めたから、電車に乗せても大丈夫だろう。
家に持って帰って、母さんと二人で食べよう。

ちょっと立ち止まって、振り返った。

すっかり暗くなった公園の生垣の向こう、
賑やかな明かりが灯る小さな家に向かって頭を下げた。


オジサンオバサン。
オジサンオバサンなんて言って、ごめんなさい。


本人に直接言ったら、かえって失礼なことになるので
心の中でしか、謝れない。


その代わり・・・


来週の火曜日には、
一番大きくて
一番おいしそうなチキンを
一番上にのせておいてあげよう。


駅へ向け歩きながら、小宮山真吾はそう思った。





【火曜日のオジサンオバサン・完】