日曜日。


私と郁美は朝からそわそわしていたが、もうお昼をとうに過ぎていた。涼はどこかへ出掛けてしまった。


「そう言えばお姉ちゃん、上司さんは何て名前?」


「言ってなかったっけ? 香取拓哉さんよ」


「ふ〜ん。歳は?」


「えっと……25くらいかなあ」


「知らないんだ?」


「だって、単なる上司と部下だもん。仕方ないでしょ?」


「でもさあ、仮にも同居するんだからさあ、せめて携帯の番号ぐらいは聞いておこうよ?」


「そうだね……」


「今日は来ないみたいね? だったら私も友達と遊びに行けばよかったなあ」


「ごめんね。今日から使ってください、って言ったんだけどなあ」


結局、香取さんは来なかった。