濡れた髪や体からは、桃の香りが放たれる


「・・・・・・・・・・・・」


鏡に映る自分は、いつもと何も変わらない

けれど、確実に変わってしまった


濡れた髪や体を拭き、月子は真っ白な浴衣に袖を通す

その手が微かに震えたが、月子は見ないふりをした


脱衣場から出てみれば、寝室の明かりが視界に入る

驚いたことに、忍は母家ではなく離れで生活をしている

弟子も寝泊まりをする母家では落ち着けない、ということを理由に、5年ほど前に建てたらしい