棗はしばらく呆然としていたが、
やがてベッドに崩れ落ちるように
両手をついた。
鳴り止まない鼓動と治まらない
身体の震えに動く事が
できなかった。

始末するって…殺せと言う事?

その意味を考えて恐ろしさに
身震いした。
シーツで身体を包むと
ベッドの下を覗く。

ベッドの下の暗闇にティアラの
黄金の瞳があった。

そっと小さな身体を抱き締める。

「ありがとう、ティアラ」

思わず棗は呟いた。

櫂斗に見えた恐怖の色。
それは玲が雷の音を聞いたときに
見た恐怖の色だった。

この屋敷に来るときにゲージを
運んだのは櫂斗の使用人だ。

アレルギーであれば使用人が
知らないはずはない。


櫂斗は猫が弱点なのだ。



大きく溜め息を吐くと
ようやく棗は肩の力を抜いた。