顔をしかめて櫂斗を見ると、
不気味な程の笑顔で、
「今日から君は僕の屋敷で
暮らしてもらう」
と、言った。

これには柊やメイドたちも
唖然となった。

「僕はもう仕事で行かなければ
いけないが他に必要なものが
あれば持ってくるといい。
家具や服はすべて僕が
用意しているから」

呆然とする棗に近付きながら
穏やかな笑みを浮かべて言う。

際まできて棗の頬に触れると
ビクンと棗の身体が跳ねた。

「わかってると思うけど、
お母さんには言ってあるから」

冷たい笑みを浮かべた櫂斗が
棗を見下ろす。
棗は鋭い視線を櫂斗に向けた。

無言で自分の部屋に戻ろうとする
棗の腕を櫂斗は掴んだ。
痛いくらいの強い力に
棗は顔を歪める。

「忘れ物だ」

言いながら櫂斗は
棗の薬指に指輪を嵌めた。
薬指に冷たいダイヤモンドの
輝きが光る。

背筋が寒くなるのを感じて
棗は息を呑んだ。
櫂斗は棗を引き寄せ顔を近づけて
棗の瞳を見つめた。

「外すなと言ったはずだ。
2度目は許さないよ」

凍り付くほど冷たい瞳と
威圧感のある声に恐怖を覚える。