静まりかえった部屋の中



陽は傾き もう薄暗い



気だるい身体を
ベッドに沈めると


かすかに体液の匂いがして
目を閉じた



暗い 真っ暗闇



このまま眠りに落ちて



永遠に目覚めなきゃいい



もう 何もかも嫌だと
無性に思った



こんな出口のない毎日に
何の意味があるのだろう



つかの間 温かい物を掴んで


だけど、結局は何も残らない



自分が空っぽだって
思い知るだけじゃない



嫌だ 嫌だ 何もかも



出口のない迷路ほど
虚しい物はない




深い深い眠りの底に堕ちて



もう目覚めたくない―――――――――――――――――――――





  蕾。



………なんで……?


底に堕ちて行くような暗闇の中



浮かぶ一筋の白い光の中



お兄ちゃんが私を呼ぶ



お母さんに なじられて


言葉を失くす小さな私に



  蕾。



手を差しのべる



私の太陽



  蕾。



笑顔で差し出された
大きな手のひら



まぶたに浮かぶ太陽は
眩しくて目を開いた



「……もう、やめたいのに
何もかも、嫌なのに」



お兄ちゃん
太陽は私を
どこまでも引き留める




いつの間にか流れた涙を
手の甲でゴシゴシ拭い
気だるい身体を起こした



お兄ちゃんが帰ってくる



一緒に食べる晩ごはんを作ろう