ある日の放課後、廊下で彼女を見つけた。


友達と2人で歩く彼女と目が合った。




すれ違った後に俺はゆっくりと振り返る。




忘れられない、あの気持ち。




振り返った俺の目に映った彼女の目。



同じように振り向いて俺を見た。




「なぁ!」



いきなり声をかけて、なんて計画性のない俺。



「ちょっといい?」


恥ずかしい気持ちから、ぶっきらぼうに話す俺。


友達は空気を読んで、その場から離れた。



「俺のこと知ってる?」


恐る恐る俺に近付いてきたゆかりさんは、俺の目を見てくれなかった。


「うん・・・ 知ってる。」


廊下に響く2人の声。


知ってると言った後、俺と目が合って、またすぐにそらす。



「付き合わない?俺と・・・」



もっと考えれば良かった。

告白の言葉…



「え・・・ でも…」

ゆかりさんは、顔全体に『困ってる』って書いてるような顔をしてうつむいた。



「ごめん・・・嘘・・・ 気にしないで。 俺みたいな不良やだよな!」


俺は強がってそう言うと、立ちすくむ彼女を置いて歩き出した。



誰かが囁いた、耳元で…


『振り向けば?』




俺は、期待せずにゆっくりと振り返る。


背中を向けているはずの彼女は

俺に向かって視線を送ってくれていた。


その目がどういう目かは、わからない。


迷惑だったのかも知れない。

俺を怖がっていたのかも知れない。




だけど、そんなことはどうでもいい。


きっと、彼女は俺を意識し始める。