それはすぐに噂ではなく現実のこととなる。
村の周りで何人もの女の子がさらわれる事件が起きたからだ。
たった一人、逃げ帰って来た子は怯えながら、吸血鬼に会ったと呟いた。
……レイシャもさらわれたうちの一人だった。
助けに行こうという私に周りの大人たちは、諦めなさいと首を振った。
この雪では、助けに行っても遭難してしまうだろうと。
それならレイシャはどうなってしまうんだろう。
私の大切な片割れは。
そう思ったら、行くあてもなく家を飛び出していた。
お父さん、お母さんごめんなさい。
勝手なことをして。
私は心の中で謝ると、十字架と銀のナイフを握りしめ、吸血鬼の館の扉が開かれるのを待った。