「だから、女じゃないですから!」

「ああ、悪かったね。でもよく言われるんじゃない?」


町での生活を始めて1ヶ月。セリルは近くの小さな喫茶店で働いていた。

セリルのもっぱらの悩みはやはり女顔だと言う事。

来店者に高確率で“お嬢さん”や“娘さん”と言われるのだ。

しかしその女顔のおかげでやや助かっている事もあった。

それは店内での喧嘩騒ぎがなくなった事。

この喫茶店、客と店員だけでなく客同士の喧嘩も度々起こっていた。

理由は“こっち見て笑ったから”や“ちょっとぶつかっただけ”という、些細な事。

度々起こることから、良くない輩からは喧嘩が出来る喫茶店と認識されていた。

そして今も、客同士の喧嘩が始まったようだ。


「今、お前がぶつかって来ただろうがっ」

「はあ!? てめえの方だろ?」