そこには、アリスタ国の第一王女であるクレアと王太子のリック、それに、護衛騎士のアダムもいた。

「皆さん、遠いところありがとうございます」
「こちらこそ招待に感謝する」

 リックはそう言うと、ジェラールににこりと笑いかける。

「ジェラール陛下はようやく至宝を手に入れられるようですね。残念ながら、我が国に用意していたミレイナの女官ポストは別の者を宛がうことにします」
「当たり前だ。前からミレイナは俺の近くから遠ざけるつもりはないと伝えたはずだ」

 ジェラールは顔を顰めて苦々しい表情を浮かべたが、怒っている様子はない。きっとふたりの間には信頼関係が成り立っているのだろうなとミレイナは思った。

「ミレイナ、おめでとう」

 アダムがミレイナに声をかけてきた。

「うん、ありがとう。アダムは元気にしていた?」
「まあね。ほら、僕って猫になれる上に身のこなしが軽いから、護衛で引っ張りだこの大活躍」

 おどけた様子は相変わらずだ。ミレイナはくすくすと笑う。