「てかさ、日曜日ヒマ? 暇なら一緒に虹祭り行こうよ!」
「……いや、用事あるんで」
「えーそうなの? あっ! もしかして彰サマ!?」

 私は無視して歩みを進める。前だけ見つめて、他は視界に入れないようにした。

「うわぁーマジか。彰サマに先越されたかぁ。こんな事ならもっと早くに誘えば良かったな~」

 塚本くんは不貞腐れたように呟く。しかも彰くんと行くって決めつけてるし。いや、間違ってはないんだけどさ。なんだか今まで以上になつかれているような気がしてげんなりするんですけど。一体どうしてこんな事に……。ていうか、

「私より神田さん誘えばいいじゃんか」
「うっ…………」

 彼女の名前を出した途端、饒舌だった塚本くんは途端に口ごもる。お前の無駄なスキルをここで使わなくてどうするんだよ。本命には奥手とか超絶的に面倒くさい。

「だってさぁ、俺が誘ったって神田ちゃん来てくんないもん。それ分かってて誘えるほどメンタル強くないんだよね」

 弱気な発言に目を丸くする。私はぽつりと呟いた。

「塚本くんでもそんな風に思うんだね」
「しつれーな! 俺割と豆腐メンタルよ?」
「ふーん。でもさ、せっかくだから少しぐらい頑張ってみれば? 当たって散って砕けてくればいいよ」
「それ結局全部ダメなやつじゃんひどい!」
「大丈夫。ちゃんと骨は拾ってあげるから……たぶん」
「多分なの!? 栞里ちゃん見かけによらず毒舌だね!?」

 私はそんなに毒舌だろうか。そういえばこの前彰くんにも言われた気がする。

「あーあ。この機会に栞里ちゃんと俺の仲を深めようと思ったのになぁ~。彰サマに取られちゃったなぁ悔しいー」
「私彰くんと行くなんて一言も言ってないんだけど……」
「え? でも行くんでしょ?」

 この確信めいた自信はどこからくるのだろう。

「なんだよなんだよ彰サマもやるなぁ。ふーん。お祭りデートかぁ。いいなぁ~超カップルっぽいじゃん羨ましい」
「別にデートってわけじゃないから」
「いやいやそれデートでしょ。フリでも一応付き合ってるんだからさ!」

 そう言われるとなんだか急に意識してしまう。そわそわと心が落ち着かなくて挙動不審になってしまった。当の本人はそんな私の様子を面白そうに眺めていた。

「楽しみだね。彰サマとの初デ・エ・ト!」

 ……これだからこの金髪チャラ男は腹が立つ。