「あ、あの、寧衣くん」

「ん?」

みんなのいる炊事場へ向かいながら、自分の右手に目線を落として彼に声をかける。

「……手、」

「イヤ?」

少しかがんで、私の顔をのぞくように上目遣いで聞いてくる彼がズルすぎる。

……かっこいいのに、可愛いすぎる。

こんな整った顔に上目遣いで見つめられちゃ、目なんて合わせられないよ。

「う、ううん!イヤなんてとんでもないっ!」

すぐに目をそらしてブンブンと首を横に振る。

いやなわけがないよ。

それでも……手を繋いでるところをみんなに見られたら、困るのは寧衣くんなんじゃ。

「ふっ、とんでもないって……浅海さん、おもしろいね」

そう言ってククッと笑う寧衣くん。

表情をコロコロ変える寧衣くんにいちいちときめいて心臓がもたない。

どんな顔してもかっこいいんだもん。

『とんでもない』ってそんなにおかしかったかな。

「……ちゃんと見せつけないとね」

「え?」

ボソッと呟いた寧衣くんがなにを言ったのか、聞き取れなくて聞き返す。

「ううん、なんでもない。早く朝ごはん食べよ」

太陽の光に照らされた朝の海みたいに、

キラキラと笑う寧衣くんがそう言って私の手を引いた。