飛鳥井狼。

俺たちと同じ鳳学園の生徒で、仁葵のクラスメイト。
そして現在、俺の仁葵の婚約者のイスにふんぞり返っている、憎たらしい男だ。


「お前は8時間は絶対寝ないと次の日に響くんだから、LINEなんてしてないでさっさと寝ろよ」

「だって~。おじいちゃんと剣馬が、なかなか狼くんと会わせてくれないからあ」

「別に俺たちは何もしてないだろ。仁葵が忙しいだけだ」

「だから、忙しくしてるのがそっちなんじゃん。私の許可なくぽんぽん勝手に予定入れてくれちゃってさあ……」


目をこすりながら文句を言う仁葵の手首をつかむ。


「こするな。赤くなる」

「う~……剣馬のバカ。過保護」

「はいはい。……学校着くまで、ちょっと寝とけ。肩に寄りかかっていいから」


小さな頭を引き寄せると、仁葵はよほど眠かったのか、素直に俺の肩に頭を預けて目を閉じた。

すぐに静かな寝息が聞こえてきて、そっとため息を吐く。


「どっちがバカだ。バカ仁葵」