『俺は祐美が好きだから』


そう言って、祐美が私に向かって微笑みかけた。


その笑顔が、すぐに涙で霞んでいく。


嬉しいからじゃない。


そんなことを言えば、愛海が怒り狂う。


そして『チョーク』ではなく『ちりとり』を選択して祐希を追い詰めてしまう。


【り】のつくものなんて、何もないんだ…。


だからやめて、今すぐにでも取り消して!と叫びたかったけど、苦しくて声が出ない。


熱いのか寒いのか、体中が引き裂かれるような痛みがする。


「ふ〜ん、じゃいいんだー?」


変に大きな声で、愛海がさらに脅しをかける。


「男を脅して付き合わせるような浅ましい女、誰が付き合うかよ!」


「な、なによそれ!?」


「お、お願い…やめ、てっ」


私は祐希のズボンを掴んで引っ張った。


「心配すんなよ」と、その手をやんわりと払われる。


「もう一回、言ってやるよ」


祐希が愛海を真っ直ぐに指差す。


「お前みたいな自己中な女、誰が付き合うかよ!」


「あ、そう!私もこんなことしたくないけど、仕方ないよね!」


「や、やめてっ…」


声を振り絞ったけど、愛海はチョークを放り投げた。


「ちりとり!」


『クリアです!』