「おう、愛海!」


遠藤良一が駆け寄ってくる。


そしてその後ろからは…。


「しりとりやんない?」


「はぁー?」


愛海と遠藤は付き合っていて、それはクラス公認だった。


それを私は羨ましく思っていて。


中3だし、彼氏の1人くらいいてもいいんじゃないか?


いや、1人でいい。


優しくて頼りがいがあって、できればイケメンで、私のことを大切にしてくれるような…。


ふと我に返る。


視線を感じたからだ。


ギロリと私を睨む、恐ろしい視線に。


南田祐希(ゆうき)。


学校1のヤンキーだ。


それがどうして良一とツルんでいるのかは分からないけど、将来は構成員だとか、人を殺したことがあるとか物騒な噂が絶えない。


その強面が、なぜか私を睨みつけてくる。


いや「なぜか」は、よく分かっていた。


なぜなら私たちは__。


「ねぇ、やろうよぅー!」


媚びっ媚びの声で良一の腕にしがみつき甘える愛美を、圭子が凍てつくような目で見ている。


「しょーがないなー。祐希もやるだろ?」


「あぁ」


短く祐希が答える。


久しぶりに聞いたな、祐くんの声。