振り返ると、ヴィヴィちゃんは私の両手が縛られた支柱のあたりでピコピコとホバリングしていた。
「……すぅ、ぷはっ」
 目線の先で、ヴィヴィちゃんがひと息吸い込んだと思ったら、可愛いらしいため息を吐く。
 次の瞬間、「ポッ」と小さな炎があがり、私の両手を縛っていた縄に移った。熱さを覚悟して一瞬身構えたけれど、不思議と熱さは感じなかった。
 っ!? 小さな火がジジジッと音を立てながら縄を焼き切っていく様子を、私は目を丸くして見つめていた。
 うそっ、ヴィヴィちゃんの吐いた炎で縄が……っ!
 縄は見る間に焼き切れて、ハラリと床に落ちた。両手が自由になった瞬間、私はヴィヴィちゃんを胸に抱き締めた。
「ヴィヴィちゃん! ありがとう!!」
「ぴぃ」
 初めて触れたヴィヴィちゃんは、これまでにモフッてきたどのドラゴンの毛質よりやわらかでモコモコだった。さらに温かなその体からは、ふわりと幸せの香りがした。