ケータイ小説 野いちご

転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

Chapter.1


CHAP1
 
 
 
「――どうした、サマラ。俺に言いたいことがあったんじゃなかったのか」

「え?」

声をかけられ、サマラはハッとした。目尻の上がった大きな目を何度もパシパシとしばたたかせ、キョロキョロと辺りを見回す。
豪華な胸像や花瓶が並ぶ屋敷の玄関前の廊下。そして目の前に立つ長身の男の顔を見上げて「ディー……」と呟いたあと、サマラは「あぁーーーっ!?」と叫び声をあげた。

目の前の男は突然絶叫をあげたサマラに、不快そうに顔をしかめた。しかめても美しい、細面の顔立ち。月色の瞳を持つ目は吊り上がった切れ長で、薄い唇とあわせ冷酷そうに見えるが、それが人を寄せつけ難い妖しい夜のような美しさを誇っていた。

サマラはこのやたらに麗しい男を知っていた。いや、父親なのだから知っていて当然なのだがそうではなく。
彼が『ディー・ル・シァ・アリセルト』という名で、大陸一の最強魔法使いで、このバリアロス王国魔法協会の権威で、王家に匹敵する『魔公爵』の爵位を保持する王国唯一の人物である、という情報を知っていた――ということを思い出したのだ。

(待って待って待って待って! ディーだよ! ディーが私の父親だよ! ってことは私はサマラだよ! え、待って待って! ってことはここは『魔法の国の恋人』の世界なの!?)

サマラは混乱していた。かつてないほど全力で頭をフル回転させる。午後のおやつに食べたクロイチゴのパイの糖分が脳を活性化させてくれている気がした。


< 2/ 200 >