魔法使いたちは身を潜めながらも、二千年以上受け継がれてきた魔法の術を忘れなかった。彼らは今まで隠し続けてきた魔法を使い、魔物たちと戦い退けた。異界の者に唯一対抗できる力を持った彼らはたちまち大陸の英雄となり、千五百年以上不遇な扱いを受けていた暗黒の時代から一転、魔法使いはどの国でも重宝され、ときには王以上に敬われる存在となったのだった。

そして現代――大陸歴二千年。
数は少ないものの魔法使いはすっかり王政の社会に馴染んでいる。
メイザー大陸のほとんどの国では、魔法使いに『魔爵』という称号を与え、侯爵以上の身分とした。彼らは領土と国からの多額の報酬を得る代わりに、国が魔物の脅威にさらされたときはそれを退ける役割を担っている。魔法が使えるとはいえ、もちろん危険な役割だ。

魔法使いたちによる研究で町や村、街道や漁港などには有害な魔物が近づかないよう結界も張られ、人々は安全な暮らしをしている。
魔物には無効だった人間の武器も、魔法使いによって錬成された剣や弓などなら傷つけられるようになった。

こうしてメイザー大陸は各国王政のもと、魔法使いとその他の人間、そして常世の者たちが共存している。

――というのが、『魔法の国の恋人ファンブックvol.1』に収録されていた、メイザー大陸の歴史だ。

ちなみにサマラの住むバリアロス王国の人口はざっと四百万人。そのうち国の公認魔法使いは三百余人。モグリの魔法使いが数十人いることを考えても、0,0001パーセントにも満たない数だ。