ケータイ小説 野いちご

私に恋する可能性





「私はそんな小さな欲が何個もあるんじゃなくて、すごく大きな欲が一つあるだけなの」


不意に口を開くひなたの切ない顔


ごく稀に見せる表情


常に元気が有り余ってるひなたにしたら珍しく

繊細で、柔らかい、優しい表情


その顔に何度心打たれたことか


今思えば俺は結構前からひなたを特別に感じていたのかもしれない



…大きな欲


ひなたの、願い


「何?」


ひなたの虚な目が俺をとらえる


「私に、恋して欲しい」



ひなたらしい、真っ直ぐで、わかりやすくて

他にない、素直な思い


思わず笑みが溢れた


『いいよ』


そう、答えようと思った


…だけど


言葉が出なかった



『ゲーム』


その単語が頭をよぎる


そうだ…ゲーム



俺がひなたに近づいた理由は、ゲームだ


賭けだ


いつまで持つか


面白半分、遊び目的でひなたに近づいた



…でも最初からひなたは、うざいくらい真っ直ぐに俺に向かってきた



自分で初めて恋を知って


その感情の繊細さを知って


その感情の…他には変えられない大切さを知った



ひなたはずっと今の俺と同じ感情を持ってたんだ


…なのに俺は


その気持ちをこれでもかというほど踏みにじった

突き放した


今のひなたの真っ直ぐな気持ちを正面から受け止める資格がない


ゲームだなんて馬鹿みたいな理由でひなたの心に土足で踏み込んだこと…本気で後悔した


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