「言われてみれば、菜花って恋バナしないよね〜いつも聞いてるばっかで自分の話ししないじゃん?」

化学室への移動中、光莉が突然そう言い出した。

「え、まぁ……人の聞いてる方が好きかな」

「なにそれ〜いや楽しいこともあるけどさ〜惚気とか愚痴とか、聞いてるばっかじゃ絶対つまらないでしょ!」

「そんなことないよ。それ言ったら光莉だってあれからどうなの?」

「いやぁ私はね、今は自分を見つめ直す時期ですから」

そうはぐらかされたけど、光莉だって十分モテるし、現に去年だって他校の人と付き合っていた。

冷めたって言って2年に上がる前に別れていたけれど。

新しい恋をはじめる気持ちとか、どうなんだろうか。

「まぁでも、菜花のそういう高嶺の花なところ好きだから、無理して彼氏作ればいいのにとは思わないけどね」

「光莉、高嶺の花って使い方間違ってるよ」

「あってます〜菜花が鈍感なだけでしょ〜」

鈍感って……。
絶対そんなことないのに。

夏目くんにあんなこと言われちゃったらよけい。

あぁ、嫌だな。

夏目くんの言葉に完全に呪われてしまった。