「ミドリ……ミドリ!」


僕は彼女のもとに駆け寄ると、ぐったりとした体を抱きかかえた。


酔いを通り越して青ざめた顔が、ぴくりとわずかに動く。


「え……」

「俺だよ、わかる?」

「……あ」

店長さん、と彼女の唇が動いた。


「大丈夫か?こんな所で倒れてちゃダメだろ」

「ごめ……」


彼女のまぶたが再び落ちてゆく。


バタバタと騒がしい足音が、背後から近づいてきた。


「ちょっとお!急にどうしたのよ、拓――」


言葉と同時に足音が止まる。


ふり返ると、息を切らした桜子と目が合った。


まばたきを忘れたミルクティー色の瞳。


空気を裂くようなクラクションが、どこからか聞こえた。






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