明凛学院に入学して、お互い「自分」を守るのに必死でもあったから
…心のモヤモヤした部分には蓋をして過ごしてきたんだ。
「…わたしだって、伊織が自分だけのひとでいてほしいって学校で何回思ったか分からない…。お父さんたちとの約束だって分かってるけど、思っちゃってた」
「うん」
「ほかの女の子たちとお弁当食べるのを断らないのも、「人気者の成瀬くん」で居続けるためだって分かってるからいいの。…でもあの「考えとく」は無し」
「うん、ごめん。紗和にやきもちやいた当てつけでした」
手はしっかりと握ったまま、わたしは伊織の肩に頭をあずける。
彼は一度ふっと笑うと、嬉しそうにわたしの頭をぽんぽんとしてくれた。
それが心地よくて、わたしもとっても嬉しくて。
「ねぇ紗和。これからもお互いの気持ちはちゃんと話し合っていこう」
「そうだね。嫌なこと辛いこともきちんと言い合ってね」
「うん。一生隣にいるんだから」
「ふふっ、本当ね」
改めて、ずっとずっと彼の隣に居たいと、そう思ったんだ――…。