北原くんのどんな冷たい言葉にも動じない安藤さんは、厄介な人だった。自分に自信があるからこんなに積極的になれるんだろうか。


「余計なお世話」


「北原くん、私保健委員だから気にしないで。なんでも手伝ってあげるから」


「・・・」


「北原くん、ネクタイが曲がってる。直してあげるね」


「あ、髪の毛ちょっと寝ぐせついてるよー」


「・・・」


北原くんも女子達の異様なテンションの高さと強引さに圧倒されているみたいで、諦めたようにため息をつく。


これまで女の子を誰も寄せ付けなかった彼だけど、怪我をしてからは私と仲良くしているように周りからは見えたのか、ますます関心をひくようになった気がした。


なにより、右手の怪我は女子達に付け入られる唯一の彼の隙になっている。


「勝手にすれば」