トイレの鍵を閉めた瞬間に、涙が溢れて止まらなくなった。


ドンドンドン!!!!


誰かがトイレのドアを思いきり叩いた。

「なおー?なお、出てきてよぅ。5時間目、サボらない?」

大好きなゆかりの声だった。


私にとって、この高校で親友と思えるのはゆかりだけだった。

仲良しグループ6人はいつも行動を共にしているけれど、分かり合えてはいない。

心から信頼できるのは・・ゆかりだけだった。


だけど・・・馬鹿な私は、そんな大事な親友にもこの気持ち隠してたんだ・・



「なお!!屋上行こうよぉ~~!!」

私は、トイレのドアを勢い良く開けて、ゆかりの胸に飛び込んだ。

ゆかりは、黙って私の手を握って、屋上へ連れ出してくれた。


屋上の重い扉の向こうには、果てしない空が広がっていた。

夏真っ盛りの、空。


入道雲が、すぐ手の届きそうなところまで、もくもくと膨らんでる。


「先生には、保健室って言っておいたよ。明日で1学期も終わりだね・・」

ゆかりは、私の涙の訳も聞かずに、遠くを見ながら髪を風になびかせていた。


「・・ゆかり・・。ごめんね。私・・・なんでだろ・・ゆかりのこと大好きなのに・・」

涙を手で拭いながら、ゆかりの横顔を見る。


「直のこと、私がわかってないと思った?好きなんでしょ?新垣のこと!」

真っ直ぐに私の目を見つめるゆかりの目は、本当に私の事全部知ってるように見えた。

見る見るうちに真っ赤になる私を見て、ゆかりはしゃがみ込んでケラケラと笑い出した。


「直ってほんとわかりやすい!!!誰にも言わないから安心して。私は、直を応援するよ。」

「でも・・・依ちゃん・・・あんなこと言ってたし・・」


依子は、彼氏のいない時期がないくらいモテていた。

狙った男は必ず落とす・・ってうちらの中では、伝説になってたんだ。