持ってきた紙袋を彼に差し出した時に手が触れ合った。
それだけで、また顔が熱くなった。


夜遅いから、彼が私を家まで送ってくれることになる。


だけど、帰り道での会話は特になかったような気がする。


「じゃあな」


「うん、また明日」


そっけなく言う彼に手を振って自宅マンションのロビーに入った。


振り返ると、彼がまだ私のことを見ていたから、ドキンと心臓が跳ねた。


また、ちょっとだけ笑って手を振る。エレベーターまで歩いていき、もう一度振り返った。


まだ、彼はそこにいて私を見ていたので、申し訳ないような恥ずかしいような気分になる。


北原くん、どうしたんだろう。


やっぱり、今日はなんだか変だったな。


だけど、その時はどうしてなのか、なんにも思いあたらなかった。


だけど、


その翌日から、彼は私のことを必要とはしてくれなくなった。


どうして急に彼が私を頼ってくれなくなったのか。


一体どうしてなのか、私にはすぐには分からなかったんだ。