だから俺は、『修理代を払います』という彼女の申し出をすかさず断った。


代わりに『俺の女よけになってくんない?』なんて、ふざけたことを言った。


もちろん彼女は戸惑ってたし、内心嫌だったんじゃないかと思う。


彼女みたいな花園のお嬢様が、俺みたいな奴の彼女のフリをするなんて、普通だったら断るだろう。


でも、彼女はスマホを壊した罪悪感からか、しぶしぶその頼みを引き受けてくれた。


正直すげぇ無茶ぶりだったと思うし、かなり強引だったと思う。


それでも俺は、このチャンスを逃したくなかった。


少しでも、彼女との距離を縮めたかった。仲良くなるキッカケが欲しかった。


彼女はたぶん、俺のことなんて知らなかっただろう。


覚えてもいなかったと思う。


でも俺は、ずっと前から彼女を知っていた。いつも見ていた。


あの時からずっと、彼女のことが好きだった――。


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