「悪いけど、私今忙しいの」

 店のお姉さんは生理用品を、中身が透けない袋に入れてくれた。

 しかし女子からすれば、「不透明の袋」=「生理用品の証」を与えられたようなものである。

 それを抱きかかえ、マンションの中に入ろうとすると。

「ああ~俺にそんな冷たい態度とっていいのかな~。母さんに言っちゃおうかな~」

 ふざけたような声で言われ、足を止めるしかなかった。

 身代わり結婚の事実がバレたら、うちの実家が危ない。

「中に入れて?」

 すぐそばの壁に手をつき、首を傾げる。

 本来ならば年下男の可愛い仕草のそれは、脅迫と威圧でしかなかった。