カタン、と後ろの病室のドアが開く音がした。

俺は真於の手を握ったまま、後ろを振り返る。

誰かは見当がついている。




先輩だ。

先輩は怯えたような目をして、ベットで寝ている真於を見ている。

自分で傷つけたくせに、何でそんな顔ができるんだよ。

俺はそんな先輩に沸々と怒りが沸いてきて、思ったより低くなってしまった声で言った。

「……何しに来たんですか、先輩」

俺は、付き合ってからは一度も使わなかった敬語と、久しぶりに先輩の前で、”先輩”と呼んだ。

先輩は俺がそう呼んだことに対して、傷ついたような顔をする。

俺は、そんな先輩の顔を見ながら話をする。

「…右手の傷、残るかもしれないそうですよ」