詩穂が心配して問うと、蓮斗は目を細めて微笑んだ。

「嫌いになってたら、今ここにいない」
「だったら、私たち、まだ友達だって思ってていいよね?」
「なにを今さら」
「だって、同じ経営学部で、同じゼミで、同じ起業コンペで張り合った仲だもん。正直に思ってたことを伝えたせいで、友情が壊れたら嫌なんだ」
「それはない」

 蓮斗は左手をそっと詩穂の肩に回し、詩穂を抱きかかえるようにして支えた。蓮斗の逞しい体をすぐ近くで感じて、安心する反面、鼓動がリズムを速める。

(どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう……。そうか、須藤くんは最初から優しい人だったんだ)

 詩穂は顔がのぼせたように熱くなり、赤い顔で蓮斗を見上げた。蓮斗は真顔で詩穂を見つめる。

「それ以上……っていうのはないのか?」
「それ以上って?」

 詩穂は首を傾げた。蓮斗は迷うように視線を動かしてから、口を開く。

「友達以上ってこと。友情以上の……」

 蓮斗が続きを言いかけた瞬間、詩穂は強烈な吐き気を覚えた。

「うっ……気持ちわる……っ」
「えっ! ちょっと待て! おまえ、家この近くだったよな? もう少し我慢できるかっ?」