「今夜はお仕事はもういいの?」

「いや、お茶を飲んだらまた執務室に戻るよ」

またなのか。
彼は毎日深夜まで仕事をしているらしい。
「毎日お忙しいんですね。あまりお休みもとれていませんよね。お身体は大丈夫なんですか?」

「心配してくれるの?楓」

「もちろんですよ」

「ああ、しばらく地上に降りていたからたまってしまったものがあって。あと2~3日で片が付くから、それが終われば楓にこの国を案内しよう」

「本当ですか。本島ですよね、行ってみたかったんです。どんな街並みかなって思っていて。ビエラさんたちのお宅も本島にあるんですよね?」

「そうだ。宮殿の中に宿舎もあるけれど、あいつらの本宅は本島にある。貴族の邸宅も商家も民の住居はみな本島だ。景色だけじゃなくて庶民的な市場も見てみるか?この国にしかない物もたくさん見ることができるだろう。買って食べるのもいいな」

景色、市場、買って食べる
なんて魅力的な。
図書室にあった本で見た情報だけでは知りえない本当の姿を見ることができるんだと思うとワクワクする。
この国にしかない物って何だろう。
どんな景色が広がっていてどんな私の見たことがないものがあるんだろう。