「突然ですが、乾杯の挨拶と、スピーチをお願いした人がいるそうです!」



マイクが依子に渡されて、私とゆかりは顔を見合わせて、『私達かも!』って緊張していた。



「今日は、皆さん来て下さって、ありがとうございます。乾杯の挨拶をお願いしたいのは、私の高校時代の恩師であります、新垣先生です。一番辛かった時期に、新垣先生に助けてもらったこと、今でも覚えています」



えぇ?


先生?



驚いたと同時に、また心配・・・



だって・・・スピーチなんてしちゃったらみんなが先生を見てしまう。



「お、俺??」



きょろきょろしながら、ネクタイをきゅきゅって結び直す先生。




「先生・・・大丈夫?緊張しない?」



私が顔を覗きこむと、親指を立てて、任せとけと言った。



さすが。


先生は、高校の教師。



人前で話すことには慣れている。



特に先生は、いつも生徒を叱る担当だから、始業式や終業式は全校生徒の前で大声を出したりしている。




コホンと一つ咳払いをした先生が立ち上がり、前へ出た。




ドキドキ・・・



こっちがドキドキしちゃう。