「ちなみに言うと。今日声かけたのは、少しでも恩を売っておかないと、いつ告げ口されるかわかんねぇと思ったから」
つまりそれは、私に優しくすることで警戒心を解いて、口外することに後ろめたさを植え付けようとした、ということ。
やっぱり、純粋な優しさなんかじゃなかった。
謝らなくてもよかったんだ。
「けど、失敗だったな。結果的に、俺のほうが……」
中島くんは何かをつぶやいて、途中で言葉を切った。
なに?と首を傾げると「なんでもない」と首を振る。
そして。
突然、爽やかな笑顔に切りかえたかと思えば。
「じゃー、また明日。はのんちゃん」
ヒラヒラ〜と手を振って私に背中を向ける。
唖然として見送るしかなかった。
どれが本物で、どれが演技なのか
依然としてわからない。
やっぱりつかめない男、中島くん。