「そんな折、ふゆみさんと私の縁談が持ち上がりました。先ほど三浦さんは政略結婚と言いましたが、それは違います。縁結びが趣味の伯母が、ふゆみさんを気に入り、私とくっ付けようとしただけです」

 なるほど。神徳が間髪を入れずに"それは違う"と言ったのは、そっちだったのか。"親"ではなく。

 間違いなく格上の四葉グループから持ちかけた縁談なら、政略結婚とはならないよな。よくわからんが。

「しかしふゆみさんは、それをチャンスと捉えたと思います」

 こいつ、またふゆみの悪口を言うのか、と思ったのだが、

「ただし、自分にとってのチャンスではないと思います。ふゆみさんは、地位やお金に執着する人ではありませんから」

 そりゃそうさ。ふゆみはそういう人だと俺も思う。でも、ちょっとは執着すると思うけどね。だって、金は無いよりは有った方がいいもんな。普通は。

「つまり、桜井グループを窮地から救うチャンスという事です。私の、四葉グループを後ろ盾にして。

 実際のところ、私はこの縁談が決まりそうになった頃、桜井グループとのタイアップを前提に、いくつかのプロジェクトを企画し、今まさに計画を練っているところです。いずれも成功すれば、桜井グループにも多大な利益をもたらすはずです」

 神徳がそこまで言った瞬間、隣のふゆみに緊張が走ったのを俺は感じた。

 そうか。破談と同時に、プロジェクトとやらはおじゃん、という事か……