「………さ…、莉彩!」


「えっ…!?」


腕を何かで突かれた感触にビックリして、少し上擦った声を出すと、隣の席から溜め息が聞こえてきた。


「ようやく反応した…。ったく、ボンヤリしてんじゃねぇよ」


ペンケースを片手に、不機嫌そうな表情を浮かべている壱夜くん。


今の言葉の感じだと、私のことを何回も呼んでたっぽいな…。


だけど反応が一切ないから、ペンケースで突いてみたってところだろう。


「ご、ごめん…。春休みボケかな…」


「新学期始まって、もう数日が経ってるんだけど。さすがに休みボケはヤバいだろ」


「あはは…。そうだね、気を引き締めないと…だね。ところで、なんで私を呼んでたの?」


理由を訊ねると、壱夜くんは私の机に置かれたノートを指差した。


「自習課題、全く手をつけてねぇから」


「か、課題…?」


「お前、それも聞いてなかったのかよ」


壱夜くんは、呆れた様子で黒板の方を見るように促す。


そこには、数学のテキストのページがいくつも書かれていた。