私は窓の前に立ち、さっとカーテンを開く。

夏の朝の強い陽射しが、部屋中を白く照らし出す。

まばゆい光を全身に浴びると、力がみなぎってくるのを感じた。

きっとできる。いや、やらなきゃいけない。


窓の向こうには、真っ青な海が広がっている。

私たちが育った町を包み込む大きな大きな海。

いつだって私たちの近くにあった、日常の一部。

たくさんの命を生み育んだ優しい海、そしてたくさんの命を奪った恐ろしい海。

私は言葉もなく桜貝のかたわれを抱きしめながら、果てしない命の海を見つめた。


また、新しい一日が始まる。

今までと同じように見えて、でも確かにどこかが違う一日が。

私は今から、いつもの朝と同じように一階に降りて洗面所で顔を洗い、寝癖を直して、朝ご飯を食べて、歯磨きをしたら部屋に戻って、制服に着替えて通学鞄を持って、家を出る。

胸の中に芽生えた密やかな決意は誰にも知られないように、《いつも通りの一日》を送るのだ。


小さな秘密と大きな覚悟を胸に、私はひとつ深呼吸をして部屋を出た。