「……勝平っ?」

私が驚いて勝平の顔を見ていると

彼は、私の唇にキスをする。

何度も…何度も…。

「…え、どうした…のっ。」

驚いて勝平を見つめると

「何で…?…ダメ?」

勝平は、イタズラっぽい表情で笑うと

私の首に唇を這わせていく。

そして髪の毛に

指を絡ませたままじっと私を見つめる。

そしてまた…

息もできないくらいのキスをする。

そのキスが暫く続き、彼は

勢いよく起き上がると

Yシャツを脱ぎ捨てベルトをはずす。

ガチャガチャ…

え…もしかして…

今日は…ちょっと無理だ…。

「ちょ…ちょっと…勝平…待って…。」

「何…」

「…あの…ちょっと今日…体調が悪くて…。」

私は、咄嗟に嘘をついた。

勝平が私の上に馬乗りになり

私の顔を少し不機嫌に見下ろしている。

彼の上半身は痩せていて

うっすら筋肉がついている。

新井くんの細身だけど硬い筋肉質な

体とは違う…。

ハッ……

…っ…?!

な、何でこんな時に彼がでてくるの?

私、最悪…だ。

そんな事を考えていると

勝平は急に私の肩を掴んで

強引にキスをしようと顔を近づける。

……ダメ…ヤダッッ…

「……っ…」

私は、避けるように横を向く。

「…紗和…?」

「ごめん…

本当に…体調が悪いの…。」

「…わかった…っ。」

私の言葉に勝平は起き上がると

Yシャツをバサッと乱暴に広げて

袖を通し寝室のドアを開けた。

「……勝平…っ、ごめん…

本当に今日は…。」

「…あのさ、その首のキズは何?」

「…え?」

キズって……?

「…首筋…赤くなってるよ…

誰かに掴まれた?」

そう言うとそのまま勝平はドアを閉めた。

その後…一晩中彼は、出てこなかった。

私も勝平のさっきの言葉が…

怖くて…

寝室に入る事が出来なかった。

鏡を見ると、確かに首筋が

赤くなっていた。

新井くんに抱きしめられて抵抗した時…

擦れたのかもしれない。

違う…

彼に、キスされてついたのかも…。

だから…勝平…首を気にしてたの?

もしかして…気づいてた…?

新井くんを見て…何か気づいたのかな?

……ごめんなさい。

もう二度と今日のデートを

思い出さないから…。

彼をもう思い出さないから…。

何度も繰り返し、呪文のように

唱えた…。

私には、勝平がいる。

何度も繰り返し…

それなのに目を閉じると一瞬…

"紗和…"

あなたのその掠れた低い声が

私を呼ぶ声が…

聞こえてきた…。