ぽふりと柔らかい葉に包まれて、私はただぼんやりと天井を眺めていた。
いっそこのまま父様の所へ行けたらいいのに。なんて。夢でしかないのは重々承知。それでも、夢を見る事くらい私の自由でしょう?

「父様…私は、疲れてしまいましたわ」

158歳以来の、私の弱音。とても母様には伝えられない、私の弱い、情けない本音。
集落は人間にバレさえしなければとてもいい所。それはわかってる。けれど、その間ずうっと私はこの集落に縛られるのよ?言いたくないけれど、出来る事なら勘弁してほしい所。
人間に見つかれば、殺されるけれどこの集落からは解放される。この集落に居続ければ、苦痛と引き換えに生きていられる。
こんな事ってある?
どっちにしたって私から言わせてもらえるならば、最悪よ。

「……誰か、助けて…」

勿論、誰にも聞かれる事なんて無いっていうのはわかってる。でも、やっぱり呟かずにはいられないもの。
狼は、群れを成さないと死んでしまう。
……ああ、いっそ。
いっそ死んだら、私は楽になるのかしら。

「…なんて。私らしくないわね、今日は」

酷い現実逃避。
死ぬなんて私にはとても出来ない。まだまだ200の子供でも、それがどれだけ怖いものかは知ってるもの。
でもどうか、もし近い内私が死ぬのなら。

私に、一度だけでも、恋をさせてほしい。