び、ビックリした……。


一瞬、勢いよく転倒するかと思ったよ…。


「あっ、ありがとう…壱夜くん」


「世話のかかるヤツ」


溜め息と共に、背中に回されていた壱夜くんの左手が離れていく。


怒ってる…?


いや、その領域を超えて呆れ気味…?


一歩後ろに下がって、おそるおそる壱夜くんの顔を見てみると、頬が少し赤くなっていた。


そして、私と壱夜くんに向けられている多くの視線。


私は、直ぐにその意味を察した。


そうだ、ここは電車の中。


今の出来事の一部始終を、たくさんの人に見られてたってことだよね…。


恥ずかしさが込み上げてきて、瞬く間に顔が熱くなる。


私は周囲から注がれる視線に背を向けると、流れる景色を眺めた。


でも、頬の熱よりも強烈なのは、胸のドキドキ。


今も…おさまる気配がない。


壱夜くんに片手で抱きとめてもらっちゃった…。


胸板も腕もガッシリしていて、逞しかったな。


また、あんなハプニングがあったらいいのに…なんて、不謹慎ながらも思っちゃったよ…。