「あぁ、あれか。お父さんもう部屋に入って来ないで的なやつか」


「え?」


「そっかそっか。静音、反抗期まだだったもんな〜。遂に来たか〜」


突然、腕を組んで天井を見上げる悠ちゃん。


「いや、反抗期とかじゃなくて…」


「何、それとも好きな男の子でも出来た?だから俺は緒方家出入り禁止?」


「ち、違うよ!私はただ…」


「勘違いすんなよ〜。静音と夕飯食べるのは、俺の中で習慣なの。歯磨きと一緒くらい当たり前なの。今更変えろって言う方が無理。落ち着かない」


「悠ちゃん…」


「まぁ、静音が、突然俺のこと気持ち悪くなって、顔も見たくないっ!って言うんなら考えるけど…そんなの部屋で泣いちゃうな」


うっ。
男子大学生が…泣いちゃうって…。


「静音が良いって言ってくれるなら、俺はもう少しこの時間を楽しみにしたい」


「……っ、う、ん」


喉の奥に何か詰まったみたいな感覚になって、鼻の奥がツンとして。


上手に返事ができなかったけど、優しく微笑んだ悠ちゃんを見て、ちゃんと届いたんだとわかる。


この日のカレーはいつもよりも少し美味しかった。