ガチャ、と鍵が回る音が鳴り、はっと我に返った。



「ただいま」



奥の玄関から聞こえてきたのは、わたしの大好きな彼氏の声。


どうしよう。意外と早く帰ってきた。



携帯をタップする。



『今日は早く帰る。18時半くらい』



うわぁ、メッセージ来てたのに今気づいた。


とんとんと足音が近づいてくる。



「なおくん、おかえり! 早かったんだね」


「うん。仕事、ひと段落したから」


「そっかー。ごめん! まだご飯準備してない。ちょっと待ってて」



急いで立ち上がり、スーツ姿のなおくんに手を合わせた。



机には、美術短期大学や美術専門学校、と書かれたパンフレットが散乱したまま。


なおくんは、それらをちらっと見てから、優しい笑顔を向けてくれた。




「いいよ。今日は俺が作るよ」






☆おわり☆