聖が、ドアから顔を突っ込んで中の様子を伺っていた。




「ボンジュール!!」





ドキっとした。



見上げた私の前にいたのは、





アランではない別のパリジャン。





確か、あの日アランと一緒に厨房にいた男性だ。




聖がカタコトのフランス語で何かを聞いていた。





「メルシー!」




聖はしょんぼりして、私を見た。




「アラン、まだ来ていないみたい。夕方にならないと来ないって・・・」





夕方。



そうか、夕方か。





ちょうど私達が日本行きの飛行機に乗り込む時間だね。






もう会えない。



でも、これで良かった。



ここで会えたら、運命感じちゃって・・・


この恋が期間限定だってことを忘れちゃうから。