松下くんの過去が明らかになって、璃乃ちゃんには迷いの色が見え始めていた。



今でも、やっぱり松下くんのことが…そう思った。

勝てない、と思った。



それでも、好きな人のためには何かしたくて。


彼女の言葉を遮るように僕は1歩進んでいた。





「行ってください」





そうして璃乃ちゃんは頭を下げて行ってしまった。


そう望んだのは僕なのに、何だろう。この喪失感は。





「…悪い」





宮野くんは僕の方を向き直して呟く。





「僕もとんだお人好しですよね。ライバルに協力しちゃうなんて…」





…違う。お人好しなんかじゃない。





「彼女の中に松下くんがいても受け止めるなんて言っておきながら本当は受け止められなかったんです。ただ自分のところにいて欲しかっただけだ」





ずっと松下くんを引き離してしまったことへの罪悪感を抱えながら。




彼女が幸せでいてくれれば…相手は僕じゃなくても。

そう思うことにした。





「ありがとう」





改めて言われると堪えていたものが溢れ出る。



奪いたいほど好きだった。

好きだったからそれだけ辛かった。


誰かに気を遣う幸せはやめよう。

心の底から幸せだと思えるように。




今はただ、君の幸せを遠くから見守るよ。




見上げるとぼやけた空が僕の目の前にあった。



--Kota:Side End--