「そっか……俺のしたことで、少しでも心動かしてくれんなら、いつだって連れ出してやるよ」

言葉の通り、夏樹君は私の閉じ切った心の窓を、盛大に開け放って、手を差し伸べてくる。

”ほら、一緒に行こうよ”
”世界は広く、まだ見たことなような美しいモノで溢れてるよ”

そんな、キラキラした言葉を重ねて、私の心を少しでも外へ誘おうとする。

永遠に明けない夜の中、君がいれば太陽が無くてもいいと思えた。

だって、もう孤独じゃないから。

「ピーターパン、上等じゃねーの。冬菜が楽しいって思える時間を、俺がこれからたくさん、プレゼントしますよ」

わざとらしくお辞儀してみせる夏樹君に、つい笑みが零れた。

それなら、もうもらってるよ……。
ずっと、この真っ暗な世界から、誰かに連れ出して欲しかったのかもしれない。

だけど、外の世界は悪意に満ちているから怖くて、踏み出せずにいた。

だから、こうして手を引いてくれる誰かを待っていたのかもしれない。

それが……君だったんだね、夏樹君。