『笑わないで!』

「くくっ……おー、我慢す……む、無理だわっ!」

「…………」

笑いやまない夏樹君に腹が立った私は、ドゴッと軽く、夏樹君のお腹を殴った。

「うっ、腹はやめろ、腹は……」

大げさだな、そんなに強く殴ってない……はず。

でも、お腹を押さえながらも、夏樹君は楽しそうだった。

「ほれ、もう一個やるよ。ご利益ある夏樹チョコレートをプレゼントだ」

『自分で食べる』

「俺を殴った罰として、俺が食べさせる!言っとくけど、冬菜に拒否権はないからな」

また、夏樹くんの手が私の顎にかかる。
そして、口内に放り込まれたチョコレート。

「俺の非常食だけどな、冬菜には何でもやるよ」

ニカッと笑う夏樹君の笑顔、口の中に広がるイチゴチョコレート味。

そのどれもが、傷ついた心に染みわたるように広がっていくのを、私は感じていた。